自筆証書遺言の作り直し|古い遺言の撤回・破棄と注意点

ご安心ください、遺言の作り直しはいつでも可能です

「一度書いた遺言の内容を変えたいけれど、そんなことできるのだろうか…」
今、この記事を読んでくださっているあなたは、きっとそんなお気持ちでいらっしゃるのでしょう。ご家族の状況が変わったり、ご自身の財産に変動があったり、あるいは、ご自身の心境に変化があったり。遺言書を見直したいと感じる理由は、人それぞれです。

まず、一番にお伝えしたいのは、遺言の作り直しは、法律で認められた正当な権利であり、いつでも、何度でも可能だということです。

民法では、遺言が遺言者様の「最終の意思」であることを何よりも尊重します。そのため、一度作成した遺言であっても、ご自身の意思が変われば、いつでも自由にその内容を変更したり、取り消したり(撤回したり)することができるのです。

ですから、遺言を見直したいというお気持ちは、ご家族や財産を大切に想うからこその、とても自然で大切な感情です。むしろ、状況の変化に合わせて遺言内容を最新の状態に保っておくことは、将来の無用なトラブルを防ぐために非常に重要なことといえます。

この記事では、司法書士として、自筆証書遺言を法的に問題なく、そしてあなたの最新の意思をできる限り適切に反映させるための作り直しの方法と、失敗しないための重要なポイントを、分かりやすく解説していきます。どうぞ、安心してお読みください。

古い自筆証書遺言、どうすれば?主な無効化の方法

すでにある自筆証書遺言を無効にするには、法律で定められたいくつかの方法があります。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切ですが、中には専門家としてあまりお勧めできないリスクの高い方法も存在します。それぞれの特徴をしっかり理解していきましょう。

方法1:新しい遺言書で、古い遺言を撤回する

一般的に有効な方法の一つが、新しく作成する遺言書の中で、古い遺言を撤回する意思を明確に記載する方法です。

【文例】
「遺言者は、令和〇年〇月〇日付で作成した遺言書を、本遺言をもってすべて撤回する。」

このように記載することで、どの遺言を無効にしたいのかが誰の目にも明らかになり、相続が始まった際に、ご家族が複数の遺言書を見つけて混乱する事態を防ぐことができます。

ただし、一つ注意点があります。もし、この新しい遺言書が何らかの形式不備で無効になってしまった場合、撤回の意思表示も無効となり、古い遺言書が効力を持ってしまう可能性があるのです。そのため、新しい遺言書は、後述する法的な要件を完璧に満たす必要があります。
より具体的な手順については、複数の遺言書が見つかった場合のルールをご覧ください。

方法2:古い遺言書を物理的に破棄する

古い遺言書を破り捨てたり、燃やしてしまったりすることも、法律上は遺言を撤回したことになると定められています(民法1024条)。ご自身の意思で故意に破棄した場合は、その遺言を続ける意思がなくなったとみなされるわけです。

一見、簡単で分かりやすい方法に思えるかもしれません。しかし、この方法には、後日の紛争につながるリスクがあります。

  • 破棄したはずの遺言書のコピーや写真が出てきて、内容を巡ってトラブルになる。
  • 他の誰かが破棄したのではないか、と相続人の間で争いになる。
  • 認知症の症状があった場合など、「本当に本人の意思で破棄したのか」が争点になる。

このように、後日の紛争につながる可能性があるため、専門家としては、物理的な破棄だけに頼る方法はあまりお勧めできません。

【注意】安易な「訂正」は危険!全文の作り直しを推奨する理由

「少し内容を変えたいだけだから、二重線を引いて訂正すればいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、安易な訂正は、かえって遺言全体を無効にしてしまうリスクを伴う、非常に危険な行為です。

民法では、遺言書の訂正に極めて厳格なルールを定めています。

  1. 変更したい箇所を二重線などで消す。
  2. 正しい文言を書き加える。
  3. 「〇字削除、〇字加入」など、どこをどう変更したかを付記して、そこに署名する。
  4. 変更した箇所に押印する。

これらの手順を一つでも間違えると、その訂正は法的に無効と判断されてしまいます。最悪の場合、どこまでが有効な遺言なのか判断できず、遺言書全体の有効性が争われることにもなりかねません。

一部分だけの修正であっても、手間とリスクを考えれば、全文を新しく書き直す方が圧倒的に安全で確実です。ご自身の最後の想いを確実な形で残すためにも、面倒に思わず、全文を清書し直すことを強くお勧めします。どのような遺産の分け方にするか、改めてじっくり考える良い機会にもなるでしょう。

【状況別】自筆証書遺言の作り直し、具体的な手順

それでは、実際に自筆証書遺言を作り直す手順を、遺言書の保管状況別に解説します。ご自身がどちらのケースに当てはまるか確認し、読み進めてください。

ケース1:遺言書を自宅などで保管している場合

ご自身で遺言書を保管されている、最も一般的なケースです。手順はシンプルですが、法的な要件を確実に守ることが重要です。

Step1:新しい遺言書を法的に有効な形式で作成する
まずは、あなたの最新の意思を反映した新しい遺言書を作成します。自筆証書遺言が法的に有効と認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 全文を自筆で書く:財産目録を除き、すべてご自身の字で書いてください。パソコンや代筆は認められません。
  • 日付を自筆で書く:「令和〇年〇月〇日」のように、年月日を正確に記載します。「吉日」といった曖昧な記載は無効です。
  • 氏名を自筆で書く:戸籍上の氏名を正確にフルネームで署名してください。
  • 押印する:認印でも構いませんが、偽造防止の観点から実印の使用をお勧めします。

財産については、誰が見ても特定できるように具体的に記載することが大切です。例えば、不動産なら登記簿謄本通りに、預貯金なら銀行名・支店名・口座番号まで正確に記しましょう。正確な相続財産目録の作成が、後の手続きをスムーズにします。

Step2:古い遺言書を確実に破棄する
新しい遺言書が完成したら、古い遺言書は破る、シュレッダーにかけるなどして、確実に破棄しましょう。前述の通り、新しい遺言書に古い遺言の撤回条項を入れておけば法的には万全ですが、ご家族が混乱しないよう、物理的にも処分しておくのが親切です。

ケース2:法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合

法務局に遺言書を預けている場合は、自宅保管のケースとは手続きが異なります。法務局に保管されている古い遺言書は、新しい遺言書を作成しただけでは法務局に残ります。内容を整理したい場合は、保管の申請を撤回する方法も検討します。

  1. 遺言者本人が法務局へ行く:遺言書を預けた法務局(遺言書保管所)の窓口へ、遺言者本人が出向く必要があります。代理人による手続きはできません。
  2. 「保管の申請の撤回」手続きを行う:窓口で「遺言書保管申請撤回書」を提出します。この手続きに手数料はかかりません。
  3. 必要書類を持参する:運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類が必要です。
  4. 古い遺言書を受け取り、破棄する:撤回手続きが完了すると、保管されていた遺言書の原本が返却されます。これを受け取り、ご自身で破棄してください。
  5. 新しい遺言書を作成する:その後、新しい遺言書を作成します。もちろん、新しく作成した遺言書を、再度、保管制度を利用して法務局に預けることも可能です。

手続きの詳細については、管轄の法務局にご確認ください。

参照:法務省「自筆証書遺言書保管制度」

作り直しで失敗しないための3つの重要ポイント

最後に、遺言の作り直しで絶対に押さえておくべき、法的に重要なポイントを3つに絞って解説します。ここを間違えると、せっかくの作り直しが無駄になってしまう可能性もありますので、しっかり確認してください。

1. 必ず「日付」が一番新しい遺言を作成する

もし、遺言書が複数見つかり、どちらの遺言書でも内容が矛盾・抵触する部分があった場合、法律では「日付が最も新しい遺言の内容が優先される」というルールがあります(民法1023条)。

これは、たとえ新しい遺言書に「古い遺言を撤回する」という一文がなくても適用される大原則です。遺言者の最終意思を尊重するという考え方に基づいています。ですから、作り直す際は、必ず作成年月日を正確に記載し、確実に一番新しい日付の遺言書とすることが極めて重要です。

2. 遺言の形式要件を完璧に守る

自筆証書遺言は、法律で定められた形式(要式)を厳格に守らなければ無効となってしまう「要式行為」です。何度もお伝えしますが、これは非常に重要なポイントです。

  • 全文、日付、氏名の自書
  • 押印
  • 財産目録をパソコン等で作成した場合は、その毎葉への署名・押印

これらに不備があると、該当部分や遺言書全体の有効性が問題となるおそれがあります。形式面の不備は、遺言の効力を巡る争いにつながる可能性があります。作り直した後は、何度も見直して、形式に不備がないか完璧にチェックしましょう。この要件は、将来の遺言書による相続登記の際にも必須となります。

3. 遺言能力が問われないよう配慮する

特にご高齢になってから遺言書を作り直す場合に注意したいのが、「遺言能力」の問題です。遺言能力とは、遺言の内容を理解し、その結果どうなるかを判断できる能力のことを指します。

もし、遺言書を作成した当時に認知症が進行するなどして、この遺言能力がなかったと判断されると、相続が開始した後に、一部の相続人から「この遺言は無効だ」と主張されるリスクがあります。そうなると、遺留分だけでなく、遺産の分け方そのものを巡って深刻な争いに発展しかねません。

こうしたリスクを避けるためには、ご自身の判断能力がはっきりしているうちに作り直すことが大前提です。もしご不安であれば、公証人が本人の意思と能力を確認しながら作成する「公正証書遺言」への切り替えを検討するのも、非常に有効な対策となります。将来認知症になった場合の財産管理に備える意味でも、一度検討してみる価値はあるでしょう。

ご不安な方は司法書士へ。専門家が適切な作り直しをサポートします

ここまで自筆証書遺言の作り直しについてご説明してきましたが、「自分一人で完璧にできるか不安…」「形式を間違えて無効になったらどうしよう」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

そのような時は、私たち司法書士にご相談ください。当事務所では、お客様ひとりひとりに寄り添い、ご状況を丁寧にお伺いした上で、法的リスクをできる限り抑えた遺言の作り直しをサポートいたします。法的に無効になるリスクをできる限り抑えたい、将来の相続トラブルを予防したい、とお考えの場合は、ぜひ一度ご相談ください。女性司法書士も在籍しておりますので、女性の方も安心してご相談いただけます。

あなたの最後の大切な想いを、確実にご家族へ届けるために。私たちが、そのお手伝いをさせていただきます。ご相談に関する料金についても、お気軽にお問い合わせください。

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