遺言執行者の選任はなぜ重要?手続きが止まる前に知るべきこと
「遺言書さえあれば、相続はスムーズに進むはず」そうお考えかもしれません。しかし、遺言書に「遺言執行者」が指定されていないことで、手続きが滞り、かえってご家族の負担を増やしてしまうケースは少なくないのです。
例えば、相続人同士が疎遠であったり、お仕事などで忙しかったりすると、銀行口座の解約や不動産の名義変更といった複雑な手続きはなかなか進みません。「誰がやるのか」という押し付け合いから、不信感が生まれてしまうこともあります。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。この実行役をあらかじめ決めておくことは、残されたご家族を無用なトラブルから守り、スムーズな相続を実現するための、相続手続きを進めるうえでの備えになります。もし、遺言執行者がいない場合には、さまざまな問題が生じる可能性があります。
この記事では、遺言執行者を選任するための具体的な方法から、誰に依頼すればよいのか、万が一のトラブルにどう対処すればよいのかまで、司法書士が分かりやすく解説します。この記事を通じて、ご自身の状況で検討すべき手続きや相談先を整理しやすくなります。
【状況別】遺言執行者の選任方法2つのルート
遺言執行者を選任する方法は、大きく分けて2つのタイミングがあります。あなたが今「遺言書を作成する前」なのか、それとも「相続が始まった後」なのか。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を確認していきましょう。
ケース1:【遺言作成前】遺言書で指定する方法
これから遺言書を作成される方にとって、最もスムーズで確実な方法が、遺言書の中で遺言執行者を指定しておくことです。故人の意思として明確に残せるため、相続開始後の手続きが格段に円滑になります。
遺言書には、以下のように記載します。
【記載例】
遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 兵庫県尼崎市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名 〇〇 〇〇
生年月日 昭和〇〇年〇月〇日
遺言執行者は、相続人やご友人などの個人だけでなく、私達のような司法書士や弁護士といった専門家を指定することも可能です。誰を指定するにせよ、大切なのは事前にその方の内諾を得ておくことです。突然の指名に戸惑い、辞退されてしまうケースも考えられます。また、万が一に備えて、予備的な執行者を指定しておくのも良いでしょう。
ご自身の意思を遺言書に明確に残すためにも、遺言書を書くタイミングを逃さず、執行者の指定を検討してみてください。

ケース2:【相続開始後】家庭裁判所へ選任を申し立てる方法
すでに相続が開始しているものの、遺言書に執行者の指定がなかったり、指定された方が亡くなっていたり、辞退されたりした場合。このときは、家庭裁判所に「遺言執行者選任申立て」を行う必要があります。
手続きの主な流れは以下の通りです。
- 申立て:利害関係人(相続人、受遺者、債権者など)が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
- 審理:裁判所が、申立て内容や候補者が適格であるかを審理します。
- 選任:裁判所が遺言執行者を選任し、審判書が送付されます。
申立てには、申立書のほか、被相続人や相続人の戸籍謄本、遺言書の写しなどが必要です。費用としては、収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手代(裁判所によって異なります)がかかります。手続きには通常1ヶ月程度の期間を見ておくとよいでしょう。
万が一、故人の遺品から複数の遺言書が見つかった場合など、状況が複雑な場合は、申立ての前に専門家へ相談することをおすすめします。
家庭裁判所の手続きに関する詳細は、公式サイトでも確認できます。
参照:遺言執行者の選任 | 裁判所
司法書士はどこまで手伝える?依頼先の賢い選び方
遺言執行者を専門家に依頼しようと考えたとき、多くの方が司法書士か弁護士かで悩まれます。どちらも法律の専門家ですが、得意分野が異なります。あなたの状況に最適なパートナーを見つけるために、それぞれの役割の違いを理解しておきましょう。相続においては、行政書士と司法書士の違いもポイントになることがあります。

司法書士への依頼が適しているケース
相続人同士で大きな争いがなく、手続きを円滑・正確に進めることを最優先に考えるなら、司法書士が適しています。
特に、相続財産に不動産が含まれる場合、手続きの負担を軽減しやすい点が特徴です。不動産の名義変更(相続登記)について、司法書士は登記申請手続の専門家として対応できるため、遺言執行から登記まで一連の手続きを相談しやすい点が特徴です。預貯金の解約、株式の名義変更、そして不動産の名義変更まで、煩雑な手続きをまとめて任せられるため、相続人の負担を大幅に軽減できます。
当事務所の強みである「始めから終わりまでのトータルサポート」は、まさにこの点にあります。争いごとではなく、遺言の内容に沿って相続手続きを円滑に進めたい。そんなご要望に、遺産整理業務の専門家としてお応えします。
弁護士への依頼を検討すべきケース
一方で、相続人間ですでに対立が起きている、または将来的に紛争へ発展する可能性が高い場合は、弁護士への依頼を検討すべきです。
例えば、「遺産の使い込みが疑われる」「遺言書の有効性そのものが争点になっている」といったケースです。弁護士は、相続人の代理人として交渉を行ったり、調停や訴訟の場で法的な主張をしたりすることができます。これは弁護士だけの専門業務です。
もし遺言書の有効性で揉めているような状況であれば、司法書士に相談いただいた場合でも、提携する信頼できる弁護士をご紹介することが可能です。まずは状況整理のためにお話をお聞かせください。
相続人や親族に依頼する際の注意点
費用を抑えるために、相続人の一人や親族に遺言執行者を依頼するケースもあります。しかし、この選択には慎重な判断が必要です。
最大のデメリットは、他の相続人から不公平感を招きやすい点です。「特定の相続人に有利なように手続きを進めているのではないか?」といった疑念は、一度生まれると払拭が難しく、家族間の関係悪化につながる可能性があります。
また、相続手続きに関する専門知識が不足していると、かえって時間がかかったり、手続きに漏れが生じたりするリスクも否定できません。中立的な立場の専門家が間に入ることで、全ての相続人が安心して手続きを見守ることができ、結果的に円満な相続につながるのです。金融機関の遺産整理サービスと比較しても、司法書士に依頼する場合は、登記を含む相続手続きについて専門的な観点から相談できます。
【困ったときのQ&A】遺言執行者を選任できない・機能しない場合
遺言執行者をめぐっては、予期せぬトラブルが起こることもあります。ここでは、よくあるお困りごととその対処法をQ&A形式で解説します。
Q. 遺言執行者になれない人(欠格事由)はいますか?
はい、います。民法第1009条により、以下の人は遺言執行者になることができません。
- 未成年者
- 破産者
これは、遺言執行には高度な判断能力や財産管理能力が求められるためです。もし遺言書でこれらの方々が指定されていた場合、その指定は無効となります。その場合は、利害関係人が家庭裁判所へ新たに遺言執行者の選任を申し立てる必要があります。
Q. 指定された人が就任を拒否(辞退)したらどうなりますか?
遺言執行者に指定されたからといって、必ず就任しなければならない義務はありません。いつでも就任を断る(辞退する)ことができます。
ただし、一度就任を承諾した後にやめる「辞任」の場合は、手続きが異なります。病気や遠方への転居といった「正当な事由」を家庭裁判所に認めてもらう必要があります。単に「面倒になった」という理由では、辞任は認められません。
いずれのケースでも、執行者がいなくなってしまった場合は、他の利害関係人が家庭裁判所に新たな執行者の選任を申し立てることで、手続きを進めることができます。

Q. 遺言執行者が何もしてくれない場合、解任できますか?
遺言執行者が正当な理由なく職務を怠っている場合、解任を求めることができます。
まずは、内容証明郵便などを利用して、職務を速やかに行うよう催告するのが第一歩です。それでも状況が改善されない場合は、家庭裁判所に「遺言執行者解任の申立て」を行います。
ただし、解任が認められるには、「任務を怠った」「不正な行為をした」といった客観的な事実(正当な事由)が必要です。単に「やり方が気に入らない」「自分と意見が合わない」といった理由だけでは解任は難しいでしょう。解任が認められ、遺言執行者が不在の状態になった後は、新たに選任の申立てを行うことになります。
まとめ:遺言執行者の選任は、遺言内容を実現するための重要な準備です
遺言執行者の選任は、単に法律で定められた手続きというだけではありません。それは、故人が遺した大切な想いを確実に実現し、残されたご家族が争うことなく、相続手続きを円滑に進めるための重要な準備です。
あなたが今、これから遺言書を作成する段階であっても、あるいはすでに相続が始まって手続きにお困りの段階であっても、専門家へ相談することで、状況に応じた対応方針を整理しやすくなります。
司法書士法人れみらい事務所では、お客様ひとりひとりに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。事務所には女性司法書士も在籍しており、ご相談いただきやすい環境づくりに努めております。初回の相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
当事務所は兵庫県尼崎市を拠点に、相続や遺言に関する手続きをサポートしています。相続手続きでは、戸籍収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、複雑な手続きを一括してお任せいただけます。また、遺言書の作成支援も行っており、将来の相続に備えた適切なアドバイスを提供しています。
初回のご相談や費用のお見積もりは無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。
当事務所は兵庫県尼崎市を拠点に、相続や遺言に関する手続きをサポートしています。相続手続きでは、戸籍収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、複雑な手続きを一括してお任せいただけます。また、遺言書の作成支援も行っており、将来の相続に備えた適切なアドバイスを提供しています。
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