任意後見契約の費用|公証人費用と司法書士の報酬目安

任意後見契約にかかる費用の全体像|3つのタイミングで理解する

「将来、もし自分の判断能力が衰えてしまったら…」そんな不安に備えるための制度が「任意後見契約」です。ご自身の意思がはっきりしているうちに、信頼できる支援者(任意後見人)と支援内容を決めておける、とても心強い仕組みといえるでしょう。

しかし、いざ検討を始めると、「費用は一体いくらかかるんだろう?」「専門用語が多くて、いつ何が必要なのか分からない…」といった壁に突き当たる方も少なくありません。

ご安心ください。任意後見契約の費用は、一見複雑に思えるかもしれませんが、お金が発生する「3つのタイミング」で整理すると、驚くほど明確に理解できます。

  1. 契約時:公証役場で公正証書を作成する際にかかる費用
  2. 開始後:判断能力が低下し、実際に後見がスタートしてから継続的にかかる費用
  3. 準備段階:専門家(司法書士など)に相談・依頼する場合にかかる費用

この記事では、司法書士として数多くの任意後見契約に携わってきた経験から、これらの費用について「いつ」「誰に」「いくらくらい」支払うのか、その内訳と目安を一つひとつ丁寧に解説していきます。こ

の記事を読み終える頃には、費用の全体像がすっきりと整理され、漠然とした不安が具体的な計画へと変わっているはずです。

将来に備えるための大切な第一歩、私たちと一緒に踏み出してみませんか。このテーマの全体像については、成年後見制度・任意後見の相談(申立て・費用の解説)で体系的に解説しています。

【早見表】任意後見の費用一覧と支払いタイミング

まずは、任意後見契約にかかる費用の全体像を一覧で確認しましょう。詳細はこの後の章で詳しく解説しますので、ここでは「いつ、どんな費用が発生するのか」という大きな流れを掴んでください。

任意後見契約にかかる費用のタイミングと種類をまとめた図解。契約時には公証人手数料と司法書士報酬、開始後には任意後見人と監督人への報酬が発生することが示されている。
タイミング 費用の種類 費用の目安 主な支払先
① 契約時 公証人手数料(法定額) 合計 2万円~5万円程度 公証役場
  司法書士の報酬 契約内容により変動 司法書士法人など
② 開始後
(判断能力低下後)
任意後見人への報酬 【家族】無報酬~月額3万円程度【専門家】月額3万円~5万円程度 任意後見人
  任意後見監督人への報酬 月額1万円~2万円程度(財産額による) 任意後見監督人
任意後見契約の費用一覧

【契約時】任意後見契約の作成にかかる費用と内訳

任意後見契約は、法律で「公正証書」によって作成することが定められています。そのため、契約を結ぶ際には原則として公証役場で、公証人に契約書(公正証書)を作成してもらう必要があります(事情により公証人が自宅・病院等へ出張して作成する場合もあります)。この時に発生するのが「公証人手数料」です。

この手数料は「公証人手数料令」という法律に基づいており、全国どの公証役場で手続きをしても金額は同じです。いわば「定価」のようなものなので、交渉によって安くなることはありません。具体的にどのような内訳になっているのか、見ていきましょう。

公証人手数料(法定額)の具体的な内訳

公証役場で支払う手数料は、主に以下の項目で構成されています。

  • 基本手数料:11,000円
    任意後見契約の公正証書1通を作成するための基本的な手数料です(証書の枚数が増える場合は加算が生じます)。
  • 登記嘱託手数料:1,400円
    契約が結ばれたことを法務局に登記(登録)してもらうための手数料です。公証人が手続きを行ってくれます。
  • 正本・謄本の交付手数料:1枚あたり250円 × 枚数
    契約書の写し(謄本)を発行してもらうための費用です。契約したご本人や任意後見人になる方が保管したり、将来金融機関などに提出したりするために必要となります。契約書が10ページで2通の謄本が必要な場合は「250円×10枚×2通=5,000円」となります。
  • その他実費(登記の印紙代など)
    登記嘱託の際に必要な収入印紙代(2,600円)や、書類の郵送代などがかかります(公証人が自宅・病院等へ出張して作成する場合は、別途、手数料の加算や日当等が生じることがあります)。

これらの合計が、契約時に公証役場で支払う費用の総額となります。一般的には2万円から5万円程度になることが多いですが、契約内容の複雑さや謄本の必要部数によって変動します。

司法書士に依頼する場合の報酬とサポート内容

任意後見契約はご自身で進めることも不可能ではありませんが、将来の財産管理や生活に関わる重要な契約です。そのため、法律の専門家である司法書士に相談し、サポートを受けながら進める方が大半です。

私たち司法書士にご依頼いただいた場合、単に書類を作成するだけでなく、以下のようなサポートを一貫して行います。

  • ヒアリング・方針設計:ご本人やご家族のご希望、将来の不安などを丁寧にお伺いし、最適な契約内容をご提案します。
  • 条項案の作成:お伺いした内容をもとに、法的に有効で、かつ将来にわたって実効性のある契約書の原案を作成します。
  • 公証役場との調整:公証人との事前の打ち合わせや、契約書案の修正などをすべて代行します。
  • 必要書類の収集支援:戸籍謄本や住民票など、手続きに必要な書類のご案内や取得のサポートをします。
  • 作成当日の立会い:公証役場での手続きに同行し、内容の最終確認や署名・押印がスムーズに進むようサポートします。
司法書士と相談する老夫婦。任意後見契約のサポート内容について説明を受けている。

このように、専門家が介入することで、手続きがスムーズに進むだけでなく、ご本人の希望を最大限に反映させた、将来にわたって安心できる契約を作成することができます。特に、任意後見人に司法書士のような専門家を選ぶことには、多くのメリットがあります。

これらのサポートに対して司法書士の報酬が発生します。当事務所の報酬目安は料金一覧ページでご案内しておりますので、そちらをご確認ください。

【開始後】判断能力の低下後に発生する月々の費用

任意後見契約は、結んだだけですぐに効力が生じるわけではありません。将来、ご本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選任してもらうことで、初めてスタートします。

そして、後見が開始した後は、継続的に発生する「月々の費用」があります。これは見落としがちなポイントなので、しっかり理解しておきましょう。

任意後見人への報酬|家族か専門家かで変わる

任意後見人の仕事は、ご本人の財産を管理し、必要な契約を結ぶなど、責任の重い役割を担います。そのため、その働きに対して報酬を支払うことができます。

  • 家族・親族が任意後見人になる場合
    親子や兄弟姉妹などが後見人になるケースでは、無報酬とすることも少なくありません。しかし、財産管理の負担は決して軽くはないため、月額1万円~3万円程度の報酬を契約で定めておくことも可能です。
  • 司法書士などの専門家が任意後見人になる場合
    専門家が後見人になる場合は、その職務に対する報酬が発生します。管理する財産の額や業務内容によって異なりますが、一般的には月額3万円~5万円程度が目安となります。

この報酬額は、契約を結ぶ際に、ご本人と任意後見人になる方との間で自由に決めることができます。将来の関係性を良好に保つためにも、事前にしっかりと話し合っておくことが大切です。

家族が後見人になる場合でも、専門家が後見人になる場合でも、それぞれのメリット・デメリットを理解して選ぶことが重要です。

任意後見監督人への報酬|家庭裁判所が決める月額相場

任意後見がスタートすると、家庭裁判所によって必ず「任意後見監督人」が選任されます。監督人は、任意後見人が契約どおりにきちんと仕事をしているか、不正がないかをチェックする重要な役割を担い、通常は弁護士や司法書士などの専門家が選ばれます。

そして、この任意後見監督人に対しても報酬の支払いが必要になります。重要なのは、この報酬額は当事者ではなく、家庭裁判所が決めるという点です。

任意後見監督人の報酬は法律で一律の基準が決まっているわけではなく、監督事務の内容や管理財産の内容等を踏まえて家庭裁判所が総合的に決定します。裁判所が公表している資料に示された「目安」の一例は以下の通りです。

  • 管理財産額が5,000万円以下の場合:月額1万円~2万円
  • 管理財産額が5,000万円を超える場合:月額2万5,000円~3万円

この報酬は、ご本人の財産から支払われ、任意後見が継続する間(通常はご本人が亡くなるまで)継続的に発生します。将来の資金計画を立てる上で、非常に重要な費用となりますので、必ず念頭に置いておきましょう。

後見人の職務内容は多岐にわたり、それを監督する役割は不可欠です。また、専門職後見人が選任されるケースでは、報酬基準も家庭裁判所の指針に基づきます。

任意後見監督人の報酬については、裁判所が公表している資料も参考になります。

参照:成年後見人等の報酬額について | 裁判所

モデルケースで見る任意後見の費用シミュレーション

ここまで解説してきた費用について、具体的なモデルケースでどれくらいになるのかシミュレーションしてみましょう。ご自身の状況に近いケースを参考に、費用のイメージを掴んでみてください。

任意後見費用のモデルケース比較図。「子どもが後見人」の場合と「司法書士が後見人」の場合の契約時費用と開始後の月額費用をシミュレーションしている。

【ケースA】子どもが任意後見人になるシンプルなケース

ご本人の財産は預貯金と自宅不動産。長男に将来の財産管理を任せるため、任意後見契約のみを作成。謄本は長男用と本人保管用の2通を作成。

  • 契約時にかかる費用(概算)
    • 公証人手数料:約25,000円
      (内訳:基本手数料11,000円+登記嘱託1,400円+印紙代2,600円+謄本代など)
    • 司法書士報酬:別途見積
  • 開始後の月額費用(概算)
    • 任意後見人(長男)への報酬:0円(無報酬と設定)
    • 任意後見監督人への報酬:月額1万円~2万円

【ケースB】司法書士が任意後見人になり、見守り契約も結ぶケース

身近に頼れる親族がおらず、司法書士に任意後見人を依頼。判断能力が低下する前から定期的に連絡を取り合えるよう「見守り契約」も同時に作成。謄本は3通作成。

  • 契約時にかかる費用(概算)
    • 公証人手数料:約45,000円
      (内訳:任意後見契約11,000円+見守り契約11,000円+登記嘱託1,400円+印紙代2,600円+謄本代など)
    • 司法書士報酬:別途見積
  • 開始後の月額費用(概算)
    • 任意後見人(司法書士)への報酬:月額3万円~5万円
    • 任意後見監督人への報酬:月額1万円~2万円

※上記はあくまで一般的なモデルケースであり、実際の費用は契約内容や財産状況によって変動します。

任意後見の費用を抑えるための4つの準備と注意点

「将来のための備えはしたいけれど、費用はできるだけ抑えたい」そう考えるのは当然のことです。任意後見契約では、事前の準備をしっかり行うことで、結果的に費用を抑えることにつながる場合があります。ここでは、専門家の視点から4つのポイントをご紹介します。

1. 財産や契約関係を事前に整理しておく

ご自身の預貯金口座、保険契約、不動産、年金、毎月の支払いなどを一覧表にまとめておきましょう。情報が整理されていると、司法書士が契約書を作成する際の作業がスムーズになり、結果として報酬を抑えられる可能性があります。

2. 公正証書の謄本の必要部数を見極める

謄本は1部発行するごとに手数料がかかります。金融機関によってはコピーで手続き可能な場合もありますので、本当に必要な部数を見極めることで、数千円の節約につながります。

3. 関連契約は本当に必要か検討する

判断能力が低下する前からサポートを受けるための「見守り契約」や「任意代理契約」は便利な仕組みですが、追加すればその分、公証人手数料も加算されます。ご自身の状況にとって本当に必要か、専門家と相談しながら慎重に検討しましょう。

4. 公的な支援制度を確認する

収入や資産が一定の基準以下の場合、法テラスの民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。費用面で不安がある方は、こうした公的な支援が利用できないか確認してみるのも一つの方法です。

認知症になる前の財産管理対策として任意後見を考える際には、こうした費用を抑える工夫も大切です。

任意後見契約の手続きと費用の支払いまでの流れ

最後に、ご相談から契約完了、そして将来の後見開始までの流れと、それぞれのステップでどの費用が発生するのかを整理しておきましょう。

  1. 司法書士への相談・方針決定
    まずは私たち専門家にご相談ください。ご希望や財産状況を伺い、任意後見契約が最適か、どのような内容にするかを一緒に考えます。この段階で、全体的な費用の見通しについてもお話しします。

    【発生する費用】相談料、司法書士への依頼を決めた場合は着手金など
  2. 契約内容の設計と書類準備
    ヒアリング内容に基づき、司法書士が契約書の原案を作成します。並行して、公証役場へ提出する必要書類(戸籍謄本、印鑑証明書など)を準備します。

    【発生する費用】書類取得の実費
  3. 公証役場との調整
    作成した契約書原案を司法書士が公証役場に提出し、内容について公証人と事前の打ち合わせを行います。
  4. 公正証書の作成・登記
    公証役場で、ご本人、任意後見人になる方、司法書士が立ち会いのもと、契約内容を最終確認し、公正証書を作成します。

    【発生する費用】公証人手数料、司法書士報酬の残金
  5. 将来の開始申立てと監督人選任
    ご本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申立て」を行います。監督人が選任されると、任意後見がスタートします。

    【発生する費用】申立ての実費、任意後見人・任意後見監督人への月額報酬

任意後見の費用に関するよくあるご質問

ここでは、任意後見の費用に関して、お客様からよく寄せられる質問にお答えします。

Q
公証人の手数料は全国一律ですか?
A

はい、その通りです。公証人の手数料は「公証人手数料令」という法律で定められており、全国どの公証役場でも同じ基準が適用されます。ただし、先述の通り、契約書のページ数や発行する謄本の数によって総額は変わってきます。

Q
任意後見監督人の報酬は誰が決めますか?
A

任意後見監督人の報酬は、当事者間で決めることはできず、家庭裁判所が決定します。ご本人の財産状況や監督業務の内容などを総合的に考慮して、裁判所が「相当額」を定めることになっています。

Q
任意後見は法定後見より必ず安くなりますか?
A

一概に「必ず安くなる」とは言えません。任意後見は、事前に契約内容を設計できるため費用をコントロールしやすい面はありますが、任意後見監督人への報酬が継続的に発生します。一方、法定後見の費用は家庭裁判所の判断に委ねられる部分が大きいです。どちらの制度がご自身のケースに適しているかは、費用面だけでなく、ご本人の希望や財産状況などを踏まえて総合的に判断することが重要です。

まとめ|任意後見の費用は事前の準備と計画が重要です

任意後見契約にかかる費用について、その全体像や内訳をご理解いただけたでしょうか。

「契約時」と「開始後」という2つの大きなタイミングで費用が発生すること、そしてそれぞれの費用には明確な目安があることを知るだけでも、漠然とした不安はかなり解消されたのではないかと思います。

大切なのは、費用について正しく理解し、事前に専門家と相談しながらしっかりと計画を立てることです。そうすることで、安心して将来への備えを進めることができます。

費用の不安がクリアになったら、次は「ご自身の希望を具体的に考える」というステップです。「誰に、どんなことをお願いしたいか」をじっくり考えてみましょう。私たち司法書士は、その想いを法的に有効な形にするお手伝いをします。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

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