兄弟相続で相続人が増えるのはなぜ?2つの理由を解説
「亡くなった叔父(伯母)の相続手続きを進めていたら、会ったこともない親戚の名前が次々と出てきて、誰が相続人なのか分からなくなってしまった…」
兄弟姉妹が亡くなった際の相続(兄弟相続)では、このように相続関係が複雑化し、当事者が増えてしまうケースが少なくありません。ご自身が当事者となり、相続人の多さに戸惑い、「なぜ相続関係が複雑になっているのか」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、兄弟相続で相続人が増えてしまうのには、法律上の明確な理由があります。その主な原因は、「数次相続(すうじそうぞく)」と「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という2つの仕組みです。
この記事を読み進めていただければ、この2つの仕組みがどのように作用し、相続人を増やしていくのか、そのメカニズムをすっきりと理解できます。そして、ご自身のケースで今何が起きているのかを客観的に把握し、次にとるべき行動が見えてくるはずです。
子どもがいない方の相続の全体像については、子どもがいない方の相続人と対策で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。
理由1:相続手続き中に相続人が亡くなる「数次相続」
相続人が増える一つ目の理由は「数次相続」です。これは、ある人の相続手続き(一次相続)が終わらないうちに、相続人の一人が亡くなってしまい、次の相続(二次相続)が始まってしまう状態を指します。
例えば、長男Aさんが亡くなったとします。Aさんには子がおらず、両親も既に他界しているため、相続人は兄弟であるBさんとCさんでした。しかし、Aさんの遺産分割協議が終わらないうちに、兄のBさんも亡くなってしまいました。この状況が数次相続です。
兄弟相続では、亡くなった方(被相続人)も、相続人となる兄弟姉妹も比較的高齢であることが多く、手続き中に誰かが亡くなってしまう可能性は決して低くありません。手続きを放置している間に、相続登記の義務化などの法改正を知らずにいると、問題はさらに深刻化します。これが、所有者不明土地問題が生まれる社会的な背景の一つでもあるのです。

数次相続が起こると、相続人はどう増える?
数次相続が発生すると、亡くなった相続人が持っていた「相続する権利」が、その人の相続人へと引き継がれます。先ほどの例で考えてみましょう。
兄Bさんが亡くなったことで、Bさんが持っていた「Aさんの財産を相続する権利」は、Bさんの相続人である「Bさんの妻」と「Bさんの子(Aさんから見れば甥・姪)」が引き継ぐことになります。
その結果、Aさんの遺産分割協議には、当初の相続人ではなかった「兄の妻」という、血縁関係の少し遠い親族まで参加しなければならなくなります。もし、Bさんの妻や子も亡くなっていれば、さらにその相続人へと権利が移り…と、関係者が段階的に増えていく可能性があります。
ご自身の状況を振り返ってみて、「そういえば、亡くなった叔父の兄弟の、配偶者の人まで話に入ってきたな…」という場合、それはまさにこの数次相続が起きているサインかもしれません。
理由2:先に亡くなった兄弟の子が相続する「代襲相続」
相続人が増える二つ目の理由は「代襲相続」です。これは、相続人となるはずだった兄弟姉妹が、被相続人(亡くなった方)よりも先に亡くなっていた場合に、その人の子(甥や姪)が代わりに相続人になるという仕組みです。
数次相続との決定的な違いは、相続人が亡くなったタイミングです。
- 数次相続:被相続人が亡くなった後に、相続人が亡くなるケース
- 代襲相続:被相続人が亡くなる前に、相続人となるはずだった人が亡くなっているケース
例えば、Aさんが亡くなった際、兄弟のDさんは既に他界していたとします。この場合、Dさんの子である甥や姪が、Dさんに代わってAさんの相続人になります。これが代襲相続です。
「甥や姪」が相続人として登場する理由は、この代襲相続によるものがほとんどです。なお、専門的な話になりますが、兄弟姉妹の代襲相続は一代限り、つまり甥・姪までと法律で決まっています。甥や姪も亡くなっていた場合に、その子(被相続人から見れば姪孫・甥孫)がさらに代襲すること(再代襲)はありません。

代襲相続が起こると、相続人はどう増える?
代襲相続によって相続人が増えるパターンを見てみましょう。例えば、亡くなったAさんに、兄弟としてBさん、Cさん、Dさんの3人がいたとします。このうち、DさんだけがAさんより先に亡くなっており、Dさんには子どもが2人(甥Eさん、姪Fさん)いたとします。
この場合、Aさんの相続人は、存命の兄弟であるBさんとCさん、そして代襲相続人である甥Eさんと姪Fさんの合計4人となります。
もし、先に亡くなっている兄弟が複数人いて、それぞれに子どもがいる場合は、その分だけ相続人は増えていきます。ご自身の叔父・叔母の相続関係を整理してみて、会ったことのない「いとこ」が登場してきたら、この代襲相続が起きている可能性が高いでしょう。
代襲相続の詳しい仕組みについては、「代襲相続の詳しい仕組み」でも詳しく解説していますので、ご参照ください。
【要注意】数次相続と代襲相続が同時に起こる複雑なケース
実務の現場では、これまで説明した数次相続と代襲相続が、一つの相続の中で同時に発生し、事態をより一層複雑にしているケースも珍しくありません。
例えば、次のような状況を想像してみてください。
- 被相続人Aさんが亡くなりました。(相続開始)
- 相続人の一人である兄Bさんは、Aさんより先に亡くなっていました。Bさんには子(甥・姪)がいます。(→代襲相続が発生)
- Aさんの遺産について話し合いをしている最中に、もう一人の相続人である姉Cさんも亡くなってしまいました。Cさんには夫と子がいます。(→数次相続が発生)
この場合、最終的な相続人は誰になるでしょうか?
答えは、「Aさんの存命の兄弟姉妹」+「兄Bさんの子(甥・姪)」+「姉Cさんの夫と子」という、非常に多岐にわたるメンバーになります。代襲相続で登場した甥・姪と、数次相続で登場した姉の家族が、同じテーブルについて遺産分割協議を行わなければならないのです。

このようなケースでは、相続人の確定だけで大変な時間と労力がかかります。誰が相続人かを正確に把握するためには、膨大な戸籍謄本を読み解き、正確な相続関係説明図を作成する必要があり、専門家でなければ対応は極めて困難と言えるでしょう。
相続人が増えると何が大変?相続割合と手続きの現実
では、数次相続や代襲相続によって相続人が増えると、具体的に何が大変になるのでしょうか。主な問題点は「相続割合の細分化」と「手続きの煩雑化」です。
まず、相続分が細かくなり、遺産の分け方が難しくなります。そして、手続き面では、関係者全員の協力が不可欠になるため、一人でも非協力的な人がいると、話し合いが全く進まなくなってしまうのです。
特に、以下の2点が手続き上の大きな負担となります。
- 戸籍謄本の収集:亡くなった方や相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集める必要があり、相続人が増えるほどその量は膨大になります。本籍地が全国に散らばっていることも多く、戸籍収集だけで数ヶ月かかることもあります。
- 遺産分割協議:預貯金の解約や不動産の名義変更には、原則として相続人全員の署名と実印が押された「遺産分割協議書」が必要です。面識のない親戚と連絡を取り、全員の合意を取り付けるのは、精神的にも時間的にも非常に大きな負担となります。
甥・姪の相続割合はどれくらい?
相続人が増えた場合、それぞれの法定相続分はどうなるのでしょうか。特に甥・姪の相続割合について、具体例を見てみましょう。
法定相続分は、亡くなった方の家族構成によって決まります。
【基本ルール】
- 配偶者は常に相続人。
- 配偶者以外の相続人には順位がある(第1順位:子、第2順位:直系尊属(父母など)、第3順位:兄弟姉妹)。
- 代襲相続人(甥・姪)は、本来相続人であった親(被相続人の兄弟姉妹)と同じ相続分を、その兄弟(甥・姪)の人数で分け合います。
<ケース1:亡くなった方に配偶者がいる場合>
相続人は「配偶者」と「兄弟姉妹(+代襲相続人)」です。
相続割合は、配偶者が3/4、兄弟姉妹全体で1/4となります。
- 例:相続人が配偶者と兄、弟(先に死亡、子2人が代襲相続)の場合
- 配偶者:3/4
- 兄:1/4 × 1/2 = 1/8
- 甥・姪(2人):(1/4 × 1/2)÷ 2 = 各1/16
<ケース2:亡くなった方に配偶者がいない場合>
相続人は「兄弟姉妹(+代襲相続人)」のみです。
相続財産のすべてを兄弟姉妹の人数で均等に分けます。
- 例:相続人が姉、妹(先に死亡、子1人が代襲相続)の場合
- 姉:1/2
- 姪:1/2
このように、相続人が増えるほど一人あたりの相続分は細かくなっていきます。財産が分けにくい不動産しかない場合などは、話し合いが難航する原因になりがちです。手続きを円滑に進めるためには、法定相続情報一覧図を作成して、相続関係と相続分を正確に把握することが第一歩となります。
複雑な兄弟相続に関与しないための「相続放棄」という選択肢
「遺産の中身もよくわからないし、会ったこともない親戚との面倒な話し合いに関わりたくない…」
このように、複雑化した兄弟相続から距離を置きたいと考える方も少なくないでしょう。そのための有効な法的手続きが「相続放棄」です。
相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、初めから相続人ではなかったことになる制度です。これにより、プラスの財産(預貯金、不動産など)を一切相続できなくなる代わりに、マイナスの財産(借金など)を引き継ぐ義務もなくなります。
特に兄弟相続では、遺産分割協議に参加する手間や精神的負担から解放されるというメリットが大きいため、有力な選択肢の一つとなります。ただし、一度手続きをすると撤回はできないため、後悔しないための慎重な判断が必要です。
相続放棄の手続きについては、裁判所のウェブサイトでも概要が説明されています。
参照:相続の放棄の申述 | 裁判所
相続放棄の手続きと3ヶ月の期限
相続放棄を行うには、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出しなければなりません。この3ヶ月の期間を「熟慮期間」といいます。
ここで重要なのが「知った時」という起算点です。兄弟相続の場合、亡くなった事実をすぐに知るとは限りません。また、先順位の相続人(子や親)が全員相続放棄した結果、初めて自分に相続権が回ってきたことを知るケースもあります。
このような場合、熟慮期間は「自分が相続人になったことを知った時」からカウントされます。しかし、3ヶ月の期限を過ぎてしまうと、原則として放棄は認められなくなりますので、相続人になったことを知ったら、速やかに財産調査を行い、放棄するかどうかを判断する必要があります。
兄弟全員でまとめて相続放棄はできる?
「兄弟みんなで関わりたくないので、まとめて相続放棄したい」というご相談は非常によくあります。手続き上、相続放棄の申述は各人が個別に行う必要がありますが、司法書士にご依頼いただければ、実質的にまとめて手続きを進めることが可能です。
例えば、必要書類である戸籍謄本などは、兄弟姉妹で共通する部分も多いため、1セット取得すれば他の兄弟の申述にも流用できます。これにより、個別に動くよりも費用や手間を抑え、効率的に手続きを進めやすくなります。相続人全員が相続放棄をお考えの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
相続放棄の「連鎖」に注意!次に誰が相続人になるか
相続放棄をする際に一つ注意すべきなのが、相続権が次の順位の人へ「連鎖」していくことです。
相続順位は、①子 → ②直系尊属(父母など) → ③兄弟姉妹 と決まっています。例えば、亡くなった方の子が全員相続放棄すると、相続権は第2順位の父母に移ります。父母など親等の近い直系尊属が全員亡くなっているか、相続放棄をした場合に、今度は第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移るのです。
もし兄弟姉妹が全員相続放棄をすると、その相続では相続人が誰もいない状態になります。この場合、利害関係者からの申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任し、最終的に残った財産は国庫に納められます。
自分が放棄することで、他の親族に相続権が移り、迷惑をかけてしまう可能性も考えられます。そのため、相続放棄をする際は、可能であれば次に相続人になる方へ事前に一報を入れておくのが望ましいでしょう。
まとめ|複雑な兄弟相続は司法書士にご相談ください
この記事では、兄弟相続で相続人が増えてしまう2つの主な理由、「数次相続」と「代襲相続」について解説しました。
- 数次相続:手続き中に相続人が亡くなり、その相続人が権利を引き継ぐこと。
- 代襲相続:被相続人より先に兄弟姉妹が亡くなっており、その子(甥・姪)が代わりに相続すること。
これらの事象が単独、あるいは複合的に発生することで、相続関係は一気に複雑化します。相続人が数十人にのぼるケースも決して珍しくありません。
そうなると、相続人を確定するための戸籍収集、全員の合意形成が必要な遺産分割協議、そして相続放棄の判断など、ご自身だけで対応するには限界があります。手続きを放置すれば、さらに数次相続が重なり、解決はより一層困難になるでしょう。
もしあなたが、複雑な兄弟相続でお困りでしたら、どうか一人で抱え込まずに、相続の専門家である司法書士にご相談ください。私たち司法書士法人れみらい事務所では、複雑な相続関係を丁寧に整理し、あなたの状況に応じた解決方法をご提案いたします。
当事務所では、初回のご相談は無料で承っております。女性司法書士も在籍しておりますので、どなたでも安心してご相談いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。
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