成年後見制度の費用相場|申立て費用、後見人報酬、司法書士費用を解説

成年後見制度の費用は3種類|まず全体像を把握しよう

ご家族の判断能力に不安を感じ、成年後見制度の利用を考え始めたとき、多くの方が最初に直面するのが「一体、いくらかかるのだろう?」という費用の問題ではないでしょうか。先が見えないお金の不安は、とても大きいものですよね。

でも、ご安心ください。成年後見制度にかかる費用は、実は大きく3つの種類に分けられます。最初にこの全体像を掴んでおけば、漠然とした不安はかなり解消されるはずです。

この記事は、2026年3月9日現在の最新情報に基づき、司法書士という専門家の視点から、成年後見制度の費用について分かりやすく解説します。

成年後見制度にかかる費用の全体像を示す図解。費用は「申立て時の初期費用」「後見人への継続費用」「専門家への依頼費用」の3種類に分類されている。

成年後見制度で発生する費用は、主に以下の3つです。

  1. 制度開始時にかかる「申立て費用」:家庭裁判所に申し立てるための初期費用です。
  2. 制度利用中にかかる「後見人への報酬」:後見人の活動に対して支払う継続的な費用です。
  3. 手続きを専門家に依頼する場合の「依頼費用」:司法書士などに申立てを依頼した場合の費用です。

この記事を最後までお読みいただければ、それぞれの費用が「いつ」「何に」「いくらくらい」かかるのか、具体的なイメージを持てるようになります。まずは落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。
成年後見制度の全体像については、成年後見制度・任意後見の全体像で体系的に解説しています。

【費用①】制度開始時にかかる「申立て費用」の詳しい内訳

成年後見制度を利用するための最初のステップが、家庭裁判所への「申立て」です。この手続きには、手数料や書類の取得費といった実費がかかります。具体的にどのような費用が必要になるのか、一つずつ見ていきましょう。

申立てにかかる実費は、ご本人の状況や財産の内容によって変動しますが、医師の鑑定が不要なケースでは数万円程度に収まることもあります。一方で、鑑定が必要になると、それに加えて5万円~20万円程度がかかることも想定されます。

主な費用の内訳は以下の通りです。

  • 収入印紙(申立手数料):800円(後見・保佐・補助の場合)。これに加えて、後見人に特定の権限(代理権や同意権)を求める場合は、追加で収入印紙が必要になることがあります。
  • 郵便切手(連絡・送達費用):3,000円~5,000円程度。家庭裁判所が関係者に書類を送るために使います。金額は各裁判所によって定められています。
  • 登記手数料(収入印紙):2,600円。後見が開始された後、その内容を法務局で登記するための手数料です。
  • 医師の診断書料:数千円~1万円程度。家庭裁判所に提出する、ご本人の判断能力に関する診断書の作成費用です。
  • 医師の鑑定費用:5万円~20万円程度。診断書だけでは判断能力の程度が明らかでない場合に、裁判所の判断で医師による鑑定が行われます。この費用は申立て費用の中でも特に高額になる可能性がありますが、必ず行われるわけではありません。
  • 各種証明書の取得費:数千円程度。ご本人の戸籍謄本や住民票、不動産がある場合は登記事項証明書や固定資産評価証明書などを取得するための費用です。

これらの費用は、申立ての際に「誰が」「何のために」支払うのかが明確に決まっています。一つひとつの金額は大きくなくても、積み重なるとまとまった出費になりますので、あらかじめリストアップして準備しておくと安心です。

より具体的な手続きについては、法定後見制度の申立書類一式|家庭裁判所への提出書類と手続きの流れをご覧ください。

【費用②】後見人への「報酬」相場と家庭裁判所による決定プロセス

制度が始まった後、継続的に発生するのが「後見人への報酬」です。これは、ご本人に代わって財産管理や身上監護を行う後見人の働きに対する対価であり、原則としてご本人の財産から支払われます。

多くの方が「毎月いくら払い続けるのだろう?」と不安に感じる部分ですが、この報酬額は後見人が勝手に決めるものではありません。

成年後見人の報酬が家庭裁判所によって決定されるまでの流れを示した図解。後見人が業務報告を行い、裁判所が審査し、報酬額が決定されるプロセスが描かれている。

報酬額は、後見人が家庭裁判所に「報酬付与の申立て」を行ったときに、提出された報告書類等の内容を踏まえて裁判官が審査し、後見人の仕事内容やご本人の財産状況などを総合的に考慮して決定します。この透明性のあるプロセスを理解することが、報酬への不安を解消する第一歩です。

後見人の報酬は、大きく分けて「基本報酬」と「付加報酬」の2種類で構成されています。それぞれの内容を見ていきましょう。

なお、家庭裁判所が公表している報酬の目安については、以下の資料もご参照ください。

参照:成年後見人等の報酬額のめやす|裁判所

基本報酬の目安は管理財産額で決まる

基本報酬は、後見人が通常行う業務(財産の管理や収支の確認、各種支払いなど)に対する報酬です。この金額は、後見人が管理するご本人の財産額に応じて変動するのが一般的です。

管理財産額 基本報酬(月額)の目安
1,000万円以下 2万円
1,000万円超~5,000万円以下 3万円~4万円
5,000万円超 5万円~6万円
管理財産額に応じた基本報酬の月額目安

このように、管理する財産が多ければ多いほど、後見人の責任や業務の負担も大きくなるため、基本報酬も高くなる仕組みです。ご自身のケースがどのくらいの報酬になりそうか、大まかなシミュレーションができますね。

付加報酬とは?特別な業務があった場合に加算される報酬

付加報酬は、日常的な管理業務の範囲を超える、特別な業務を行った場合に基本報酬に上乗せされるものです。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 不動産の売却や賃貸借契約の締結
  • 遺産分割協議や保険金の請求
  • ご本人に代わって訴訟手続きを行う
  • ご本人の事業に関する手続きを行う

これらの業務は、専門的な知識が必要であったり、手続きが複雑で大きな労力を要したりします。そのため、その業務の難易度に応じて、家庭裁判所が相当と認める金額が加算されます。

例えば東京家庭裁判所の目安では、身上監護等に特別困難な事情があった場合に、基本報酬額の50%の範囲内で相当額を付加するものとされています。

家族が後見人になる場合、報酬はどうなる?

「家族が後見人になれば、報酬はかからないのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに、家族が後見人になる場合、家庭裁判所に報酬付与の申立てをせず、無報酬で活動するケースは少なくありません。

しかし、法律上は、家族後見人であっても専門職の後見人と同様に、報酬を受け取る権利があります。後見人の職務内容は、想像以上に時間と手間がかかり、精神的な負担も大きいものです。

そのため、「家族だから無報酬が当たり前」と考えるのではなく、業務内容に見合った報酬を請求することも正当な選択肢の一つです。

また、注意点として、家族が後見人になった場合でも、家庭裁判所の判断で、その業務を監督する「後見監督人」として司法書士などの専門家が選任されることがあります。

この場合、後見監督人に対する報酬が発生します。例えば東京家庭裁判所の目安では、管理財産額が5,000万円以下の場合は月額1万円~2万円、5,000万円を超える場合は月額2万5,000円~3万円とされています。

専門家が後見人に選ばれるケースについては、専門職後見人(司法書士など)が選任されるケースと報酬基準で詳しく解説しています。

【費用③】司法書士など専門家への依頼費用

成年後見の申立ては、ご自身で行うことも可能ですが、多くの書類を準備したり、家庭裁判所とのやり取りが必要だったりと、手続きは決して簡単ではありません。そこで、司法書士などの専門家に手続きを依頼する方も多くいらっしゃいます。

司法書士に依頼した場合、申立ての実費とは別に報酬が発生します。報酬は事案の難易度や財産の内容によって変動しますが、一般的には10万円前後からが目安となります。

私たちがご依頼いただいた場合、主に以下のようなサポートを行います。

  • 家庭裁判所に提出する申立書類一式の作成
  • 財産目録や収支状況報告書の作成サポート
  • 家庭裁判所との連絡調整や照会への対応
  • 戸籍謄本や不動産登記事項証明書など、必要書類の収集代行

司法書士に依頼する費用は、事案の難易度、関係者の人数、資産の内容、書類収集の範囲などによって変動します。そのため、私たちは必ず事前に丁寧にご状況を伺い、お見積りをご提示した上で業務に着手いたしますので、ご安心ください。

当事務所の詳しい料金については、料金一覧ページをご覧ください。

成年後見制度の費用を抑える3つの方法

市区町村の役所の窓口で、成年後見制度の助成金について相談している様子の写真。費用負担の軽減策について専門家から説明を受け、安心している。

ここまで読んで、「思ったより費用がかかるな…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、経済的な理由で制度の利用を諦める必要はありません。

費用負担を軽減するための公的な支援制度や、別の選択肢も存在します。ここでは、費用を抑えるための具体的な3つの方法をご紹介します。

①お住まいの市区町村へ相談する(成年後見制度利用支援事業)

まず検討したいのが、お住まいの市区町村が実施している助成制度です。多くの自治体では「成年後見制度利用支援事業」として、申立てにかかる費用や後見人への報酬の一部を助成しています。

対象となるのは、主に住民税非課税世帯や生活保護を受給している方など、経済的に困窮している方です。助成額は自治体によって異なりますが、申立て費用は数万円、後見人報酬は月額2~3万円程度を上限としている場合が多いようです。

ご自身が対象になるか分からない場合でも、まずは市区町村の高齢者福祉担当課や、お近くの地域包括支援センターに問い合わせてみることをおすすめします。制度利用への第一歩となるかもしれません。

参照:成年後見制度利用促進|厚生労働省

②法テラスの費用立替制度を利用する

経済的な余裕がなく、専門家への依頼費用や申立て実費の支払いが難しい場合には、「法テラス(日本司法支援センター)」の民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。

この制度は、一定の収入・資産要件を満たす方を対象に、司法書士や弁護士への報酬、裁判所に納める実費などを一時的に立て替えてくれるものです。立て替えてもらった費用は、原則として後から分割で返済していくことになります。

資力要件を満たす場合、法テラス等の民事法律扶助制度による費用立替・分割返済の利用が考えられます。ただし、対象や要件は地域や時期によって異なるため、個別に確認が必要です。費用面で専門家への相談をためらっている方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

③判断能力があるうちなら「任意後見」や「家族信託」も選択肢に

もし、ご本人の判断能力がまだしっかりしている段階であれば、法定後見制度以外の選択肢を検討することで、長期的な費用を抑えられる可能性があります。

  • 任意後見契約:将来、判断能力が低下したときに備えて、あらかじめご自身で後見人(任意後見人)を選び、その人に任せる仕事内容や報酬を契約で決めておく制度です。報酬額を事前に決められるため、将来の費用計画が立てやすいというメリットがあります。
  • 家族信託:ご自身の財産を信頼できる家族に託し、契約で定めた目的に従って管理・処分してもらう制度です。後見制度のように家庭裁判所が定める「後見人報酬」が毎月発生する仕組みではない一方で、家族信託は設計によっては受託者報酬等のコストが発生する場合があります。

ただし、これらの制度も契約書作成などの初期費用はかかりますし、家族信託と成年後見制度では目的や役割が異なります。どちらが最適かは、ご本人の希望や財産状況によって変わるため、専門家と相談しながら慎重に検討することが大切です。

費用に関するよくあるご質問(Q&A)

最後に、成年後見制度の費用に関して、皆さまからよく寄せられる質問にお答えします。

Q
申立て費用や後見人報酬は、最終的に誰が負担するのですか?
A

原則として、すべて「ご本人」の財産から支払われます。

申立ての時点では、手続きを進めるご家族(申立人)が一時的に費用を立て替えることが多いですが、後見が開始されれば、その費用はご本人の財産から精算することができます。ご家族が負担し続ける必要はありません。

ただし、例外的にご本人の財産が乏しく、親族が任意で費用を負担することもありますが、その場合でも適切な会計処理と家庭裁判所への報告が必要です。

Q
後見人への報酬は、いつまで支払い続ける必要がありますか?
A

原則として、ご本人がお亡くなりになるまで、または判断能力が回復して後見終了の審判がなされるまで続きます。

成年後見制度は、一度開始するとご本人の財産や権利を守るために、長期的に継続する制度です。そのため、報酬も継続的に発生することを理解し、長期的な視点で資金計画を立てておくことが重要になります。

この「簡単にはやめられない」点は、成年後見制度のデメリットとして挙げられることもあります。

Q
任意後見の場合、監督人への報酬は必ずかかりますか?
A

任意後見契約を実際に動かすには、任意後見監督人が選任される必要があります。

任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が生じます。この監督人は、任意後見人が契約通りに適正な仕事をしているかをチェックする重要な役割を担っており、通常は司法書士や弁護士などの専門家が選ばれます。

そのため、契約で定めた任意後見人への報酬とは別に、この監督人への報酬(月額1万円~3万円程度が目安)が必ず発生することを覚えておきましょう。

まとめ|費用の不安は専門家への相談で解消できます

成年後見制度には、申立て時の初期費用から、制度利用中の継続的な報酬まで、様々な費用がかかります。しかし、その内訳や相場、そして家庭裁判所による決定プロセスを理解すれば、漠然とした不安はかなり和らぐのではないでしょうか。

また、経済的な負担が大きいと感じた場合でも、市区町村の助成制度や法テラスの立替制度といったセーフティネットが用意されています。費用面だけで利用を諦めてしまう前に、まずは活用できる制度がないか調べてみることが大切です。

とはいえ、ご家庭の状況によって最適な選択は異なります。費用のことで頭がいっぱいになり、本来の目的である「ご本人の安心な生活を守る」ことを見失ってしまっては本末転倒です。

私たち司法書士は、成年後見制度の専門家として、ご家族それぞれの状況に合わせた最適なプランをご提案し、費用についても透明性をもってお示しします。一人で悩まず、まずはお気軽に私たちの事務所にご相談ください。あなたの不安を、安心に変えるお手伝いをさせていただきます。

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