相続財産目録の作成方法と記載例|司法書士に依頼するメリット

相続財産目録とは?作成しないとどうなる?

ご家族が亡くなられた後、やらなければならない手続きは多岐にわたりますが、その全ての土台となるのが「相続財産目録」の作成です。故人が遺した財産と負債を一覧にまとめたこの書類は、相続手続きをスムーズに進めるために不可欠なもの。

しかし、「なぜわざわざ作る必要があるの?」「面倒だから後回しにしたい…」と感じる方も少なくないかもしれません。

ですが、もしこの目録を作成しなかった場合、後々大きなトラブルに発展してしまう可能性があるのです。このセクションでは、まず相続財産目録が持つ重要な役割と、作成を怠った場合に起こりうるリスクについて解説します。

相続手続きの全体像については、相続手続きの代行(遺産整理業務)は尼崎の司法書士へ|費用・流れを徹底解説で体系的に解説しています。

財産目録は相続手続きの設計図

相続財産目録は、単なる財産のリストではありません。それは、これから始まる相続手続き全体の「設計図」と言えるものです。

この設計図があることで、相続人全員が「故人にはどのような財産が、どれくらいあるのか」という全体像を正確に共有できます。この共通認識が、後の遺産分割協議を冷静かつ円滑に進めるための基礎となります。

【財産目録が土台となる主な手続き】
  • 遺産分割協議:誰がどの財産を相続するのか話し合うための前提資料になります。
  • 相続放棄の判断:プラスの財産よりマイナスの財産(借金など)が多い場合、相続放棄を検討するための重要な判断材料となります。
  • 相続税申告の要否判断:財産の総額を把握し、相続税の申告が必要かどうかを見極めるために不可欠です。

私たち司法書士の視点から見ると、この「設計図」がないまま話し合いを進めるのは、非常にリスクが高い行為です。財産の全体像が見えないままでは、感情的な対立が生まれやすく、後から新たな財産が見つかって協議をやり直す、といった事態にもなりかねません。

財産目録がない場合に起こりうる3つのトラブル

「うちは家族仲が良いから大丈夫」と思っていても、財産目録がないことで思わぬトラブルに巻き込まれるケースは後を絶ちません。具体的にどのようなことが起こりうるのか、3つのシナリオを見ていきましょう。

  1. 遺産分割協議がまとまらず長期化する
    財産の全体像が不明確なままでは、「兄は生前に援助を受けていたはずだ」「母が管理していた預金があるはず」といった憶測や不信感が生まれ、話し合いが紛糾しがちです。客観的な目録がないため、議論が平行線をたどり、解決までに数年を要するケースも珍しくありません。

  2. 後から借金が見つかり、相続放棄できなくなる
    故人が遺したプラスの財産だけを分けて安心していたら、数ヶ月後に消費者金融から督促状が届いた…というケースです。原則として相続放棄ができるのは「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」です。
    財産調査を怠った結果、この期間を過ぎてしまうと、故人の借金を背負わなければならなくなる可能性があります。

  3. 申告漏れで追徴課税が発生する
    「相続税はかからないだろう」と自己判断していたものの、後から調査漏れの財産(例えば地方の土地やネット証券の口座など)が税務調査で発覚し、ペナルティとして重い追徴課税(過少申告加算税や延滞税)を課せられるケースです。正確な財産目録は、こうしたリスクを避けるためにも不可欠なのです。

【5ステップで完了】相続財産目録の作成手順

「財産目録の重要性はわかったけれど、何から手をつければいいのか…」と途方に暮れてしまう方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。ここからは、財産目録を作成するための具体的な手順を5つのステップに分けて、わかりやすく解説していきます。この流れに沿って進めることで、初めての方でも財産目録を作成しやすくなります。

ステップ1:相続人を確定させる(戸籍収集)

財産調査を始める前に、まず「誰が相続人なのか」を法的に確定させる必要があります。これが全てのスタート地点です。

そのためには、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を全て集めなければなりません。これにより、前妻との間に子がいないか、認知している子がいないかなど、把握していなかった相続人の存在が明らかになることがあります。

この作業は、後の遺産分割協議を有効に進めるための大前提となります。集めた戸籍を元に法定相続情報一覧図を作成しておくと、その後の金融機関での手続きや不動産登記がスムーズに進むため、取得しておくことをお勧めします。

ステップ2:プラスの財産を調査する

次に、故人が遺したプラスの財産を一つひとつ調査していきます。自宅にある通帳や郵便物などを手がかりに、網羅的にリストアップしていきましょう。

相続財産調査で調べるべきプラスの財産とマイナスの財産の種類を一覧にした図解。不動産、預貯金、有価証券、負債などがアイコンと共に示されている。
【主なプラスの財産と調査方法】

不動産(土地・建物)

  • 確認するもの:固定資産税の納税通知書、権利証(登記識別情報通知)
  • 取得する資料:登記事項証明書、名寄帳(市区町村役場で取得)

預貯金

  • 確認するもの:通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物
  • 取得する資料:残高証明書(金融機関で取得)

有価証券(株式・投資信託など)

  • 確認するもの:証券会社からの取引報告書、配当金計算書
  • 取得する資料:残高証明書(証券会社で取得)

生命保険

  • 確認するもの:保険証券、保険会社からの控除証明書
  • 取得する資料:保険会社への照会で契約内容を確認

ステップ3:マイナスの財産(負債)を調査する

プラスの財産の調査と並行して、非常に重要なのがマイナスの財産、つまり借金や未払金などの負債の調査です。これを見落とすと、後で大きな問題になりかねません。

【主なプラスの財産と調査方法】

借入金(住宅ローン、カードローンなど)

  • 確認するもの:契約書、返済予定表、通帳の引落履歴、督促状
  • 調査方法:信用情報機関(JICC, CIC, KSC)に情報開示請求を行う

未払金(税金、医療費、家賃など)

  • 確認するもの:納税通知書、病院からの請求書、賃貸借契約書

保証債務

  • 確認するもの:保証契約書、金銭消費貸借契約書
  • 注意点:故人が誰かの連帯保証人になっていないか。これは書類が見つかりにくく、潜在的なリスクとなるため注意深く調査が必要です。

負債の調査は、相続放棄を検討する上で極めて重要です。3ヶ月という熟慮期間はあっという間に過ぎてしまいます。

もし相続放棄の熟慮期間(3か月)を過ぎた場合でも対処法はありますが、原則として期限内の判断が必要なため、負債の調査は迅速に行いましょう。

ステップ4:【要注意】デジタル資産の調査

相続手続きで、故人のスマートフォンに残されたネット銀行やネット証券などのデジタル資産の調査をしている男性。

現代の相続で、特に調査が難しく、見落とされがちなのが「デジタル資産」です。

通帳や証券のような紙の書類が存在しないため、故人のスマートフォンやパソコンの中を注意深く確認する必要があります。

【主なデジタル資産と調査の手がかり】
  • ネット銀行・ネット証券:スマートフォンの銀行・証券アプリ、取引確認メール
  • 暗号資産(仮想通貨):取引所のアプリ、ウォレットアプリ、取引履歴のメール
  • FX(外国為替証拠金取引):FX会社のアプリ、入出金のメール通知
  • その他:電子マネー、ポイント、マイル、放置されたサブスクリプション契約(負債になる可能性)

これらのデジタル資産は、価値の変動が激しいものも多く、放置すると大きな損失に繋がるリスクがあります。

また、IDやパスワードが分からないとアクセスすらできず、財産が永久に失われてしまうことも。クレジットカードの明細やメール履歴を丹念に追い、契約しているサービスを特定することが重要です。

ステップ5:調査結果を目録にまとめる

ステップ1から4までの調査が完了したら、いよいよその結果を財産目録の形にまとめていきます。調査で集めた資料(登記事項証明書や残高証明書など)を見ながら、財産の種類ごとに情報を整理し、誰が見ても分かるように記載していきましょう。

これで、相続手続きの設計図である財産目録の作成準備がすべて整いました。次のセクションでは、具体的な書き方と、すぐに使えるテンプレートをご紹介します。

【記載例つき】財産目録の書き方と無料テンプレート

ここからは、調査した財産をどのように目録へ記載していくのか、具体的な書き方を見ていきましょう。「どんな情報を、どのくらい詳しく書けばいいの?」という疑問を解消し、各種手続で活用しやすい財産目録を作成できるよう、財産別の記載例と注意点を詳しく解説します。また、すぐに使える無料のテンプレートもご用意しましたので、ぜひご活用ください。

財産別に見る記載例

財産目録に記載する際は、単に「土地」「預金」と書くだけでは不十分です。後の名義変更手続きで「どの財産のことか」を特定できるよう、必要な情報を正確に記載することが重要です。

財産の種類 記載すべき項目 記載例 ポイント(なぜ必要か
不動産(土地) 所在、地番、地目、地積 所在:尼崎市〇〇町一丁目地番:1番1地目:宅地地積:150.00㎡ 登記申請に必須の情報です。住居表示(〇〇町1-2-3)ではなく、登記事項証明書に記載の「地番」を正確に転記します。
不動産(建物) 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 所在:尼崎市〇〇町一丁目1番地1家屋番号:1番1種類:居宅構造:木造瓦葺2階建床面積:1階 60.00㎡, 2階 50.00㎡ 土地と同様、登記申請に必須の情報です。マンションの場合は、一棟の建物の表示と専有部分の表示を記載します。
預貯金 金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、残高(基準日) 〇〇銀行 尼崎支店普通預金 口座番号 1234567残高:3,500,000円(2026年3月6日現在) 金融機関での解約・名義変更手続きで必要です。残高は「被相続人が亡くなった日」のものを記載するのが基本です。
有価証券 証券会社名、支店名、口座種別、銘柄、数量or口数 △△証券 ネット支店特定口座株式会社〇〇 株式 500株 証券会社での移管手続きに必要です。評価額も記載しますが、日々変動するため基準日を明記しましょう。
負債 債権者、債務の種類、残高(基準日) 株式会社〇〇クレジットカードローン残高:800,000円(2026年3月6日現在) 相続放棄の判断や、遺産分割で誰が債務を引き継ぐかを決めるために不可欠です。
相続財産目録の記載例

財産目録作成で失敗しないための3つの注意点

テンプレートを使えば誰でも簡単に目録を作成できますが、いくつか注意すべき点があります。これを知らないと、せっかく作った目録が手続きに使えなかったり、後々のトラブルの原因になったりすることも。専門家の視点から、特に重要な3つのポイントをお伝えします。

  1. 評価額の基準日を明確にする
    預貯金は「被相続人が亡くなった日(相続開始日)」など基準日を決めた残高を記載するのが一般的ですが、株式や不動産の価値は変動します。特に遺産分割協議で「誰がいくらもらうか」を話し合う際は、「分割協議時点の時価」が基準になることが多いです。目録には「〇年〇月〇日時点の評価額」と、基準日を必ず明記しておきましょう。
  2. 名義預金など、実質的な所有者に注意する
    例えば「故人名義の口座だが、実質的にはお孫さんのために貯めていたお金(名義預金)」のようなケースです。形式的には故人の財産ですが、実質的な所有者が異なる場合、相続財産に含めるべきか争いになることがあります。こうした財産は備考欄に経緯を記載し、後の話し合いの材料とすることが重要です。
  3. 記載漏れは絶対に避ける
    財産目録に基づいて作成した遺産分割協議書は、いったん成立すると変更は容易ではありませんが、相続人全員の合意がある場合などは、再協議(やり直し)や追加の協議が必要になることもあります。もし目録に記載漏れの財産が後から見つかった場合、その財産のためだけに、また相続人全員で話し合い、書類を作成し直す手間が発生します。調査は慎重に行い、漏れがないようにしましょう。

財産目録の作成は司法書士に依頼すべき?費用とメリットを解説

ここまでご自身で作成する方法を解説してきましたが、「調査や書類作成にそこまで時間をかけられない」「財産の種類が多くて複雑だ」「相続人間で揉めないか心配…」と感じる方もいらっしゃるでしょう。

そんなとき、相続の専門家である司法書士に依頼するという選択肢があります。

司法書士に依頼する4つの大きなメリット

司法書士に財産調査と目録作成を依頼すると、単に手間が省けるだけでなく、ご自身で作成する以上の大きなメリットがあります。

  1. 正確かつ網羅的な財産調査
    私たちは、業務上必要な範囲で職務上請求等により戸籍等を取得したり、相続人の委任状等に基づいて金融機関へ残高証明書の発行依頼等を行ったりすることができます。固定資産税の課税明細書や名寄帳を読み解き、私道持分や未登記の建物といった見つけにくい財産を発見したり、信用情報機関へ照会して負債の有無を調査したりと、専門的なノウハウで財産の全容を正確に把握します。
  2. その後の手続きに直結する書類作成
    私たちは、最終的な不動産の名義変更(相続登記)まで見据えて財産目録を作成します。登記申請に必要な情報を正確に記載するため、後々の手続きで「情報が足りない」といった手戻りがなく、スムーズに手続きを完了させることができます。
  3. 時間的・精神的負担の大幅な軽減
    相続手続きでは、平日の昼間に市役所や法務局、金融機関など様々な場所へ足を運ぶ必要があります。お仕事をされている方にとって、これは大きな負担です。専門家に任せることで、これらの煩雑な手続きから解放され、大切なご家族を亡くされた悲しみと向き合う時間を持つことができます。
  4. 相続人間の公平性を担保し、トラブルを予防
    特定の相続人が財産調査を行うと、「何か隠しているのではないか?」と他の相続人から疑念を抱かれることがあります。利害関係のない第三者である司法書士が間に入ることで、調査の公平性・透明性が担保され、相続人全員が納得感を持ってその後の遺産分割協議に臨むことができます。

こんなケースは司法書士への相談がおすすめ

ご自身の状況が以下のようなケースに当てはまる場合は、一度司法書士に相談してみることを強くお勧めします。ご自身で進めるよりも、結果的に時間も費用も節約できる可能性が高いです。

  • 相続財産に不動産が含まれている
  • 相続人の数が多く、遠方に住んでいる人もいる
  • 平日は仕事が忙しく、手続きのための時間が取れない
  • ネット証券や暗号資産など、調査が難しいデジタル資産がある
  • 借金があるかどうか分からず、相続放棄を検討している
  • 他の相続人との関係が良好でなく、トラブルになりそうで不安

当事務所では、相続に関する無料相談を承っております。まずはお気軽にご状況をお聞かせください。

司法書士への依頼費用と相談先の選び方

財産目録の作成を含む相続手続き一式の代行(遺産整理業務)を司法書士に依頼する場合の費用は、財産の種類や額、相続人の数などによって変動します。

当事務所の具体的な費用については、こちらの料金一覧ページをご参照ください。初回のご相談の際に、ご状況を詳しくお伺いした上でお見積りを提示させていただきます。

また、信頼できる司法書士を選ぶ際は、以下の点をチェックすると良いでしょう。

  • 相続案件の実績が豊富か
  • 料金体系が明確で、事前にきちんと説明してくれるか
  • 親身に話を聞いてくれて、コミュニケーションが取りやすいか

財産目録が完成した後の手続きの流れ

さて、正確な財産目録が完成したら、いよいよ本格的な相続手続きがスタートします。財産目録の作成はゴールではなく、あくまで出発点。ここからは、その後の手続きがどのような流れで進んでいくのかを簡潔にご紹介します。遺言書がない場合の一般的な流れについては、遺言書がない場合の相続登記手続き|遺産分割協議書作成のポイントもご参照ください。

遺産分割協議と協議書の作成

完成した財産目録を基に、相続人全員で「誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのか」を話し合います。これが遺産分割協議です。全員の合意が得られたら、その内容を法的に有効な書面である「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名・押印します。

各種名義変更(不動産登記・預貯金解約)

遺産分割協議書が完成したら、次はその内容に従って、各種財産の名義変更手続きを行います。不動産であれば法務局で相続登記を、預貯金であれば金融機関で解約・名義変更手続きを進めます。

特に不動産の相続登記は2024年4月から義務化され、原則として相続を知った日から3年以内に申請しなければなりません。この手続きは司法書士の専門分野ですので、安心してお任せいただけます。

参照:法務局「相続登記の申請義務化について

相続税の申告・納税(必要な場合)

相続財産の総額が、法律で定められた基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。申告・納税の期限は「相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月目の日」とされています。相続税に関する手続きは税理士の専門分野となりますが、当事務所では提携している税理士と連携し、ワンストップでサポートすることも可能です。

相続財産目録に関するよくある質問(FAQ)

最後に、相続財産目録の作成に関して、お客様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
財産目録の作成に期限はありますか?
A

財産目録そのものに法的な作成期限はありません。しかし、関連する手続きには厳格な期限が定められています。特に、借金が多い場合に検討する相続放棄の期限は「3ヶ月」、相続税の申告期限は「10ヶ月」です。

これらの判断を正確に行うためにも、財産目録の作成はできるだけ速やかに着手することをお勧めします。

Q
評価額はいつの時点のものを記載すれば良いですか?
A

目的によって基準となる時点が異なります。預貯金は「被相続人が亡くなった日」の残高を記載します。

不動産や株式の評価額は、遺産分割協議では「協議を行う日(時価)」を、相続税申告では「相続開始日(亡くなった日)」の評価額を基準にするのが一般的です。そのため、目録には「〇年〇月〇日時点の評価額」というように、基準日を明記しておくことが重要です。

Q
他の相続人が財産を教えてくれません。どうすればよいですか?
A

相続手続きを進める上で、残念ながら時々起こりうる問題です。まずは協力をお願いするのが基本ですが、応じてもらえない場合や、連絡が取れない相続人がいる場合、ご自身での調査には限界があります。

このような場合、司法書士や弁護士が代理人として財産調査を行うことができます。専門家が介入することで、他の相続人も協力的になったり、法的な手段を用いて財産を開示させたりすることが可能になります。お困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。

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