法定相続情報一覧図の作成方法|メリットと必要書類を司法書士が解説

法定相続情報一覧図とは?戸籍の束を1枚にまとめる便利な制度

ご家族が亡くなられた後の相続手続きでは、銀行や法務局、証券会社など、さまざまな窓口で「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの一連の戸籍謄本」の提出を求められます。

相続人の数や、亡くなった方が何度も転籍しているケースでは、戸籍謄本の束が分厚いファイルになることも珍しくありません。

この戸籍の束を、手続きのたびに何度も提出し、原本を返してもらう…という手間は、ご遺族にとって大きな負担となります。

そんな悩みを解決するために生まれたのが「法定相続情報証明制度」です。

この制度を利用すると、戸籍謄本等の束とご自身で作成した「法定相続情報一覧図」を法務局に申し出ることで、登記官の認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し(法定相続情報証明)」の交付を無料で受けられます。

その後の手続きでは、分厚い戸籍謄本の束の代わりに、この写し(A4用紙1枚〜複数枚)を提出して手続きを進められるようになります。

この記事では、相続手続きの負担を劇的に軽くする「法定相続情報一覧図」について、作成するメリット・デメリットから、具体的な作り方、金融機関での使い方まで、司法書士が分かりやすく解説します。

相続手続きの全体像については、相続手続きの代行(遺産整理業務)は尼崎の司法書士へ|費用・流れを徹底解説で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

参照:「法定相続情報証明制度」について – 法務局 – 法務省

【作るべき?】メリット・デメリットを徹底比較|司法書士がケース別に解説

法定相続情報一覧図は非常に便利な制度ですが、すべての人におすすめできるわけではありません。ご自身の状況によっては、作成する手間の方が大きくなってしまう可能性もあります。

ここでは、「どんな人が特にメリットを受けられるか」「逆に手間だけかかってしまうのはどんなケースか」を具体的に比較しながら、あなたが一覧図を作るべきかどうかの判断基準を専門家の視点から解説します。

メリット:手続きの負担を大幅に軽減できるケース

以下のようなケースに当てはまる方は、法定相続情報一覧図を作成するメリットが非常に大きいと言えます。

  • 相続財産(預貯金口座、証券口座など)が複数の金融機関にわたる場合
    例えば、銀行口座が3つ、証券口座が1つある場合、通常は4つの金融機関それぞれに戸籍謄本の束を提出し、原本還付の手続きをしなければなりません。法定相続情報一覧図を使えば、必要な枚数の写しを無料で発行してもらえるため、4つの手続きを同時並行で進めることができ、手続き期間を大幅に短縮できます。
  • 不動産が複数ある、または遠方にある場合
    不動産の相続登記(名義変更)でも、法定相続情報一覧図は戸籍謄本の束の代わりになります。複数の法務局に登記申請が必要な場合も、手続きがスムーズになります。
  • 手続きにかかる費用を節約したい場合
    戸籍謄本は1通数百円かかります。出生から死亡まで揃えると数千円になることも。法定相続情報一覧図の写しの交付自体は手数料無料なので、多くの手続き先がある場合、結果的に費用を抑えられます。
  • 戸籍謄本の原本を紛失するリスクを避けたい場合
    分厚い戸籍謄本の束を郵送でやり取りしていると、紛失のリスクが常に伴います。一覧図を使えば、原本のやり取りが最小限で済むため安心です。
  • 5年間は無料で再発行できる
    一覧図を申し出た日から5年間は、必要になればいつでも無料で写しの再交付が可能です。後から新たな財産が見つかった場合でも、慌てずに対応できます。

デメリット:かえって手間になる可能性のあるケース

一方で、次のようなケースでは、一覧図を作成するメリットが少ない、あるいは逆に手間が増えてしまう可能性も考えられます。

  • 相続手続き先が1〜2ヶ所しかない場合
    例えば、相続財産が銀行預金1つだけ、といったケースです。この場合、一覧図を作成するために戸籍一式を集める手間と、銀行に直接戸籍一式を提出する手間がほとんど変わりません。むしろ、法務局への申出というワンクッションを挟む分、時間がかかってしまう可能性があります。
  • 制度に対応していない金融機関等が一部に存在する可能性
    法定相続情報証明制度は比較的新しい制度のため、ごく稀に、金融機関の担当者が手続きに不慣れな場合や、独自のルールで戸籍謄本の原本提出を求められるケースもゼロではありません。
  • 遺産分割の内容までは証明できない
    一覧図は、あくまで「誰が法定相続人か」を証明するものです。相続人同士で「誰がどの財産を相続するか」を決めた遺産分割協議の内容までは証明できません。そのため、金融機関での手続きなどでは、一覧図に加えて遺産分割協議書や印鑑証明書の提出が別途必要となります。

ご自身の状況と照らし合わせ、「手続き先が3つ以上あるか?」を一つの目安として、作成を検討してみてはいかがでしょうか。

法定相続情報一覧図の作成方法|4ステップで完全ガイド

法定相続情報一覧図の作成手順を図解したインフォグラフィック。ステップ1「必要書類の収集」、ステップ2「一覧図の作成」、ステップ3「法務局へ申出」、ステップ4「写しの交付」の4段階の流れが示されている。

「自分でも作れそう」と感じた方のために、ここからは法定相続情報一覧図を作成する具体的な手順を4つのステップに分けて解説します。一つずつ着実に進めていきましょう。

ステップ1:必要書類を収集する

まず、申出に必要となる書類を集めます。役所で取得する書類が多く、これが一番大変なステップかもしれません。必ず必要になる書類と、場合によって必要になる書類があります。

書類の種類 必ず必要になる書類 取得場所
被相続人(亡くなった方)に関する書類 出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本住民票の除票(または戸籍の附票) 本籍地・住所地の市区町村役場
相続人に関する書類 相続人全員の現在の戸籍謄本(または抄本) 本籍地の市区町村役場
申出人(手続きをする方)に関する書類 氏名・住所が確認できる公的書類(運転免許証のコピー、マイナンバーカードのコピーなど)
法定相続情報一覧図の申出に必要な書類一覧
【場合によって必要になる書類】
  • 各相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し):一覧図に相続人の住所を記載したい場合に必要です。
  • 委任状:司法書士などの代理人に依頼する場合に必要です。

特に「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」の収集は、本籍地の変更が多い方だと複数の役所に請求する必要があり、時間と手間がかかります。より具体的な手順については、尼崎市での相続手続き必要書類|戸籍・評価証明書の集め方をご覧ください。

ステップ2:法定相続情報一覧図を作成する

必要書類が集まったら、その情報をもとに一覧図を作成します。手書きでもパソコンで作成しても構いません。

作成にあたっては、法務局のウェブサイトで提供されている主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例を利用するのが最も確実です。ご自身の家族構成に合った様式をダウンロードして使いましょう。

【作成時のポイント】
  • 必ずA4サイズの用紙に印刷(または作成)します。
  • 戸籍謄本に書かれている通り、正確に情報を転記します。旧字体の漢字などもそのまま書き写しましょう。
  • 続柄は、被相続人から見た関係(例:「妻」「長男」)を記載します。
  • 【重要】相続人の住所を記載するかどうか:一覧図に相続人の住所を記載しておくと、不動産の相続登記など一部の手続きで、別途住民票の提出を省略できる場合があります。住所を記載する場合は、ステップ1で相続人全員の住民票も取得しておく必要があります。

ステップ3:申出書を作成し、法務局へ提出する

一覧図が完成したら、法務局へ提出するための「申出書」を作成します。申出書も法務局のウェブサイトからダウンロードできます。

【申出書の作成と提出】
  • 申出書の記入:被相続人の情報や申出人の情報を記入します。必要な一覧図の写しの枚数も忘れずに記入しましょう。後からでも追加発行できますが、手続き先の数にあわせて少し多めに請求しておくと安心です。
  • 提出先の法務局:以下のいずれかの法務局(登記所)に提出できます。ご自身にとって一番便利な場所を選べます。
    • 被相続人の本籍地(死亡時)
    • 被相続人の最後の住所地
    • 申出人の住所地
    • 被相続人名義の不動産の所在地
  • 提出方法:法務局の窓口へ直接持参するか、郵送で提出します。郵送の場合は、作成した書類一式と、返送してもらうための切手を貼った返信用封筒を同封するのを忘れないようにしましょう。

ステップ4:認証された「写し」の交付を受ける

法務局に申出書と添付書類を提出し、内容に不備がなければ、登記官による認証文と公印が付された「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。

交付までにかかる期間は、法務局(登記所)の混雑状況や書類の内容(補正の有無)にもよりますが、数日〜数週間程度かかる場合があります。そして、この交付にかかる手数料は無料です。

この「写し」が、これからの相続手続きで、あの分厚い戸籍謄本の束の代わりとして活躍してくれることになります。

【実践編】金融機関や相続登記での使い方と注意点

司法書士事務所で、法定相続情報一覧図を使った手続きについて司法書士から説明を受け、安心した表情を浮かべる相談者。

無事に一覧図の交付を受けたら、いよいよ実際の相続手続きで活用していくことになります。

ここでは、利用する機会が最も多い「金融機関」と「不動産の相続登記」での使い方と、実務上の注意点を解説します。

金融機関(銀行・証券会社)での預貯金・株式の相続手続き

銀行や証券会社での預貯金解約や株式の名義変更手続きは、相続手続きの中でも特に件数が多くなりがちな手続きです。

当事務所でも、法定相続情報一覧図を活用して複数の金融機関手続きを同時に進めるケースは非常に多く、その利便性を実感しています。

窓口では、戸籍謄本の束の代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出します。これにより、担当者が相続関係を確認する時間が短縮され、手続きがスムーズに進むことが期待できます。

【金融機関での注意点】
  • 一覧図だけで完結するわけではない:前述の通り、一覧図は法定相続人を証明するものに過ぎません。そのため、ほとんどの金融機関で、これに加えて「遺産分割協議書」と「相続人全員の印鑑証明書」、そして金融機関所定の「相続手続依頼書」の提出が求められます。
  • 事前に電話で確認を:スムーズに手続きを進めるため、事前に支店へ電話をして「法定相続情報一覧図を利用した相続手続きの必要書類」を確認しておくことを強くおすすめします。これにより、窓口での手戻りを防ぐことができます。

不動産の相続登記(名義変更)での活用法

不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」においても、法定相続情報一覧図は戸籍一式の代わりに添付書類として利用できます。これにより、登記申請の際の添付書類がシンプルになり、準備の負担が軽減されます。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続の開始を知った時から3年以内に登記を申請しなければならなくなりました。この制度をうまく活用して、早めに登記を済ませておくことが重要です。

もちろん、相続登記でも一覧図の他に、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書、不動産を相続する人の住民票、最新の固定資産評価証明書などが必要になりますので、準備を怠らないようにしましょう。

法定相続情報一覧図に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、お客様からよく寄せられる法定相続情報一覧図に関する質問にお答えします。

Q
法定相続情報一覧図に有効期限はありますか?
A

法律上の有効期限はありません。ただし、提出先である金融機関などが、内部ルールとして「発行後3ヶ月以内」や「発行後6ヶ月以内」のものを提出するよう求めてくる場合があります。

もし期限が過ぎてしまっても、申出をした日から5年間は法務局で無料で再交付を受けられますので、慌てる必要はありません。

Q
遺産分割協議の結果は一覧図に記載されますか?
A

いいえ、記載されません。法定相続情報一覧図は、あくまで「戸籍上の相続人は誰か」という事実を証明するものです。

「誰がどの財産を具体的に相続するのか」という遺産分割協議の結果については、別途「遺産分割協議書」を作成して証明する必要があります。

Q
費用は本当に無料ですか?何か隠れた費用はありますか?
A

法務局で一覧図の「写し」を交付してもらう際の手数料は、何枚発行してもらっても無料です。ただし、申出の前提として必要になる「戸籍謄本」や「住民票」などを市区町村役場で取得する際には、1通あたり数百円の実費がかかります。

また、これらの書類収集や一覧図の作成を司法書士などの専門家に依頼した場合は、当然ながら専門家への報酬が発生します。

Q
数次相続(相続が連続して発生)の場合も使えますか?
A

はい、数次相続のように相続関係が複雑なケースでも利用可能です。ただし、亡くなった方一人ひとりについて一覧図を作成する必要があります。

例えば、お父様が亡くなり、その手続き中に相続人であるお母様も亡くなってしまったような場合は、お父様の相続に関する一覧図とお母様の相続に関する一覧図の2種類を作成することになります。

このような複雑なケースこそ、専門家が腕を発揮する場面でもあります。

戸籍収集や一覧図作成が難しいと感じたら専門家への相談も検討

ここまで法定相続情報一覧図の作成方法や使い方について解説してきましたが、「思ったより大変そう…」「自分で戸籍を全部集めるのは難しいかもしれない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

特に、以下のようなケースでは、ご自身で手続きを進めるのが困難な場合があります。

  • 亡くなった方が何度も転籍を繰り返しており、戸籍の収集が複雑
  • 相続人の中に行方不明の方や、連絡が取りづらい方がいる
  • 代襲相続や数次相続が発生していて、相続関係が複雑になっている
  • 平日に役所や法務局へ行く時間を確保するのが難しい

当事務所では、これまで数多くの法定相続情報一覧図の作成と、それを利用した金融機関での手続き代行を手がけてまいりました。

お客様からは「銀行手続きの進め方が分かりやすかった」「必要書類の準備がスムーズになったと感じた」などのご感想をいただくことがあります。

煩雑な戸籍謄本の収集から、正確な法定相続情報一覧図の作成、そしてその後の金融機関や法務局での手続きまで、すべて司法書士が代行することが可能です。

相続手続き全体を一括してお任せいただくことで、ご遺族の皆様の心身のご負担を大きく軽減できると確信しております。

相続手続きでお困りの際は、どうぞお一人で悩まず、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。あなたにとって最適な解決策を一緒に見つけていきましょう。

相続手続きの全体像については、相続手続きの代行(遺産整理業務)は尼崎の司法書士へ|費用・流れを徹底解説で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

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